2025年11月03日
ハラスメント
「今日の上司の発言に、とても傷ついてしまった」
「さっきの一言は、行き過ぎた暴言のような気がする」
「毎日何を言われるのかが怖くて、会社に行きたくない」
など、昨今パワーハラスメント(以下、パワハラ)に悩んでいる方は非常に多いと思います。
しかし、これはパワハラではないか?と思っても、判断基準が分からなければ行動するのに足踏みしてしまいますよね。
そこで、この記事ではパワハラにあたる言葉を一覧にしてまとめ、さらにパワハラを受けた際のセルフケアや相談窓口などを詳しく紹介していきます。
「もし自分がパワハラを受けているかも」と感じた方は、ぜひ参考にして心と身体を守る行動につなげてください。
(なお、個別的事情によってはパワハラに該当しない場合もあります)
パワハラは「パワーハラスメント」の略で、厚生労働省は、パワハラの定義を以下のように制定しています。
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
参考:厚生労働省 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!
1.身体的な攻撃
2.精神的な攻撃
3.人間関係からの切り離し
4.過大な要求
5.過少な要求
6.個の侵害
上記のような行為があった場合、パワハラに該当します。
次に、パワハラにあたる言葉のジャンルについて、解説していきます。
こちらを脅したり怖がらせる言葉は「脅迫」と判断され、パワハラにあたる可能性があります。
仮に相手(上司等)が冗談のつもりで言ってきていたとしても、客観的に見てパワハラの3つの要素に当てはまる場合には、認定される可能性が高まります。
こちらの人格を否定したり侮辱する言葉も、パワハラとして認められる場合が多いです。
さらに、人種や国籍、性別などを理由とした差別も侮辱にあたり、これらの言葉もパワハラとして認定される可能性は高いです。
こちらが不快やストレスを感じるような非常識な暴言や誹謗中傷は、パワハラと判断される場合が多いです。
例えば、ひどい悪口を言われたり身体的な特徴についてバカにされるなどは過度な暴言であり、パワハラとして認定されやすいです。
それでは、パワハラにあたる可能性のある具体的な言葉を、ジャンルごとに紹介していきます。
※パワハラかどうかを判断するのは、ハラスメント事案の加害者でも被害者でもない、関係者や社外の専門家などの「第三者」です。
よって、これから紹介する言葉を実際に言われたとしても、第三者がさまざまな状況を鑑みて判断するため、「絶対にパワハラとして認められる」とは言い切れないことは予めご承知おきください。
もし相手(上司等)が冗談のつもりで言ったとしても、パワハラとして認められる場合があります。
クビをほのめかされ、客観的に見て「脅迫されている」と感じてもおかしくないような言葉は、パワハラに認定される可能性があります。
退職を強要して脅してくる発言も悪質であり、パワハラにあたる場合が多いです。
「殴る」は、立場の弱い人間を蔑んだ卑劣な発言・行為であり、パワハラとして認定されやすいです。
こちらを非常識に仕立て上げて脅迫してくる行為は、パワハラと認められる可能性があります。
どんな意図があろうとも、「徹底的に追い詰めてやる」は、何をされるのかわからず、こちらが恐怖や不安を感じてもおかしくない発言は不適切であり、パワハラにあたる場合があります。
仮に相手(上司等)がこちらにやる気を出させるための発言だったとしても、性格や人格などの批判に当たる可能性があり、パワハラと認定されることがあります。
こちらが発言することも許さないこの言葉は、脅迫行為でありパワハラだと判断される場合があります。
恐怖を感じさせる脅迫めいた発言であり、パワハラと認められる可能性があります。
「泥棒」は、こちらを侮辱し自尊心を大きく傷つける言葉であり、パワハラに認定されやすいです。
存在や人格を否定するのはこちらを蔑ろにした発言であり、パワハラにあたる場合があります。
仕事がなくなる不安や恐怖を感じるこの言葉は、パワハラとして認められる可能性が高いです。
上の立場を利用してこちらの能力を侮辱する発言は、それまでの状況や関係などからパワハラにあたる場合があります。
こちらの親のことを侮辱するこの言葉は、悪質なパワハラ発言として認定される可能性があります。
直接関係のない子どもについて侮辱するような発言は言語道断であり、パワハラと認められる場合が多いです。
勝手に第三者も含めて侮辱してくるこの言葉は、パワハラだと判断される可能性があります。
業務と関係のない食事を引き合いに出して侮辱してくるのは、パワハラ発言として認められる可能性があります。
言われた側は侮辱された気持ちになる性格や人格を否定する言葉であり、パワハラと判断される場合があります。
「腐ったミカン」という言葉自体が屈辱的なものであり、パワハラとして認定される可能性が高いです。
自分の能力を否定され心に大きなダメージを受ける言葉であり、パワハラとして認められやすいです。
ほかの人と比較されると自己評価が下がり、深い心の傷を負いかねません。パワハラに発展しかねない言葉ですので、要注意です。
こちらを頭ごなしにバカにしてくる卑劣な発言であり、パワハラとして認められる言葉です。
個人の社会的価値や存在を根本から否定するもので、非常に攻撃的で侮辱的な言葉であり、パワハラとして認められる可能性が高いです。
言われたら恐怖と不安が襲ってくる言葉であり、パワハラとして認定される可能性が高いです。
こちらの知能や能力を直接否定し、立場を利用して見下してくるこの言葉は、パワハラ発言と判断される可能性があります。
同じく上の立場を利用してこちらを見下してくるこの言葉は、非常に悪質です。パワハラに発展しかねない言葉ですので、要注意です。
自身の存在意義を否定され、深刻な精神的ダメージを受けるこの発言は、パワハラとして認められる可能性が高いです。
「ゴミ」は、こちらを価値のないものとして扱う非常に侮辱的な言葉であり、パワハラ発言と判断されやすいです。
身体的な特徴を侮辱する最低な言葉の数々であり、悪質なパワハラ発言と認められやすいです。セクハラにもなることがあります。
こちらの生命そのものを否定する極めて攻撃的な言葉であり、こちらに深刻なトラウマを与えるパワハラだと判断される可能性が高いです。
ここでは、パワハラを受けた心を守る「セルフケア」について、紹介していきます。
厚生労働省のホームページでは、以下の6つのセルフケアを提唱しています。
運動には、ネガティブな気分を発散させたり、こころと体をリラックスさせ、睡眠リズムを整える作用があります。
1日20分を目安に、体がぽかぽかして、汗ばむくらいの運動を続けてみましょう。
自分の気持ちをありのままに書くことで、今抱えている悩みと距離をとり客観的に見ることで落ち着いて物事を考えられるようになったり、それまで思いつかなかった選択肢に自分で気づけるようになります。
不安や緊張が強くなるときこそ、意識して「深い呼吸」を心がけてみてください。
徐々に気持ちが落ち着いてきて、リラックスできるようになります。
自分を「弱い」と思ったり、自分の「欠点」ばかりに目を向けるのではなく、自分の「できていること」に目を向けて、自分を労わり、自分の力をもう一度信じましょう。
そして、今あなたが思っている理想を思い浮かべ、イメージが浮かんだら、その第一歩になる目標を立てて実行してみましょう。
そのときどきの気分にあった曲を選んで、音楽にひたりましょう。
歌うのが得意な人は「聞く」だけでなく、カラオケボックスなどに行って、思い切り発散してみると、不安やイライラもどこかに消えてしまうかもしれません。
「笑い」はこころを軽やかにして、つらい日々を乗りこえる力をつけてくれます。
笑えないことも多いと思います。せめて口角を上げるだけでもやってみましょう。
自律神経が整いリラックスできることがあります。
上記は、沈んだ心をうまく気分転換する方法や、ストレスを発散する方法になります。
休日や時間のある時に、自分自身の状況と趣向にあったセルフケアを早めに実践することで、気持ちが落ち込むことを少しでも減らせるかもしれません。
また、もし職場でパワハラを受けてしまった直後でも、
など、実践できるものから少しずつやってみて、自分自身の心と体を労ってあげましょう。
参考記事:厚生労働省|こころと体のセルフケア
「相談するのは恥ずかしい」と思ってしまう被害者がいます。
しかし、パワハラを受けてしまうとメンタルヘルス不調になることがあります。
時にはうつ病や適応障害になることがあります。社内の相談窓口や身近な人に早めに相談することが大事です。
社外にも相談先がありますので、パワハラについて相談する際の外部窓口などについて、ご紹介していきます。
総合労働相談コーナーは、全国にある労働基準監督署や労働局などに設置されている、労働問題を相談するための窓口です。
電話や面談を通して、相談員の助言や指導を受けられますので、パワハラに悩む方の助けになってくれます。
予約不要かつ無料で利用でき、秘密厳守で相談に対応してもらえますので、パワハラ相談に対して不安を抱えている方におすすめです。
労働相談センターとは、労働者が抱えるトラブルや不安を相談できる窓口の総称です。
自治体や労働組合、NPOなど、さまざまな団体が運営しており、名称や相談できる内容の範囲は運営主体によって異なります。
たとえば、東京都には行政が運営する「東京都労働相談情報センター」があり、解雇・労働条件・ハラスメントなど幅広いトラブルに対応しています。
また、全国労働組合総連合(全労連)など労働組合も「無料労働相談ホットライン」を設けており、地域によっては「労働相談センター」と呼ばれる場合もあります。
電話やメールで無料相談を受け付けているケースが多く、パワハラをはじめ、賃金未払い・不当解雇などの相談が可能です。
労働組合が運営する窓口では、労働者の立場に寄り添ったアドバイスが得られ、必要に応じて組合加入を案内される場合もあります。

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトの「こころの耳」では、パワハラについてLINEやメール、電話で相談できます。
サイトには、ストレスセルフチェックや疲労蓄積度セルフチェックなどのコンテンツがありますので、まずは自分の状態をチェックしてみてはいかがでしょうか。

「みんなの人権110番」では、法務局職員や人権擁護委員にパワハラの悩みを相談できます。
電話やメールで相談できるほか、直接話を聞きたい場合には、法務局や地方法務局、支局で面談も可能です。

法的トラブルを解決するための総合案内所である「法テラス」でも、パワハラの相談を受け付けています。
弁護士に依頼したいけれど費用を用意するのが難しい方におすすめです。
社労士(社会保険労務士)は、労働関連の法律や社会保険の専門家です。
社労士の仕事には労務管理があり、社員の職場環境を管理する役割を担っています。
このようなことから、労務管理に含まれるパワハラについても相談可能です。
ただし、社労士には労働裁判や訴訟の申し立て代理権がないようですので、注意してください。
「パワハラをしてきた相手」や「企業」を相手取り、訴訟を起こしたいという場合は弁護士に相談しましょう。
弁護士は法の番人でもありますので、法律的な観点から適切なアドバイスをしてくれます。
ただし、弁護士に依頼する場合は着手金が必要であり、慰謝料や損害賠償を受け取った際には成功報酬が発生しますので注意が必要です。
| 窓口 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 総合労働相談コーナー | 厚労省の公的窓口。あっせん制度も利用可 | 法的に対応したい人 |
| 労働相談センター | 自治体・労組・NPOが運営。地域性あり | 身近に相談したい人 |
| こころの耳 | メンタルケア特化。LINE相談可 | 心のケアを重視したい人 |
| 人権110番 | 法務局の人権相談窓口 | 人権侵害として相談したい人 |
| 法テラス | 弁護士相談も支援。費用が難しい人に◎ | 法的に争いたい人 |
| 社労士 | 労務管理の専門家。社内改善に強い | 職場改善を考えたい人 |
| 弁護士 | 訴訟・慰謝料請求も可能 | 法的に戦いたい人 |
相談先の詳細情報や、パワハラの相談の流れと準備すべきものについては、以下の記事をご覧ください。
屈辱的・差別的な発言で人の心を深く傷つけるパワハラは、決して許される行為ではありません。
「パワハラを受けているかも」と思ったら、一人で抱え込まず、本記事を参考にして自身にとって一番やり易い方法で対処していきましょう。
一人でも多くの方がパワハラから解放されることを願い、これからも実りの多い記事をお届けしていきます。

企業や官公庁、学校にて年間200回程度のセミナーを行い、年間400人以上から個別の相談を受け、さまざまなハラスメントを解決に導いてきた著者が、パワハラ対策を徹底解説しています。
本書では、加害者・被害者・第三者・組織それぞれの視点から、パワハラの仕組みや防止策を具体的なケースと実践的なテクニックで解説。
心理的安全性の高い職場づくり、叱り方や言いかえの工夫、日常的な声かけや行動共有など、パワハラ対策を網羅した一冊です。
メンタルリンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
パワハラ加害者行動変容プログラム(※現在作成中の研修を入れる予定です。)
【管理職向け】心理的安全性研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/psychological_safety/
※心理的安全性が高い職場をつくるためには何をすればいいのかワークを通して理解できます。
【管理職向け】パワハラ防止研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_prevention/
※感情コントロールを身に付けることができます。
【全社員向け】パワハラ対策研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_measure/
【全社員向け】タイプ別コミュニケーション研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/egogram/
※心理診断をもとにタイプ別にどのようなコミュニケーションを取るとより良い関係を築くことができるようになるのか理解し、実践することができます。
株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。 研修・講演は年間約200回、カウンセリングは年間のべ400人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。『なぜパワハラは起こるのか 職場のパワハラをなくすための方法(ぱる出版)』『「ハラスメント」の解剖図鑑』(誠文堂新光社)『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)など書籍・メディア掲載も多数。