2023年04月27日
コミュニケーション
4月から、新入社員が皆様の職場の仲間として加わっているのではないでしょうか。
新入社員は企業の未来を作る大事な人財であり、皆様もとても期待していると思います。しかし、いざ一緒に働くと「Z世代のことは理解不能」と悩んでいる経営者・上司・先輩も多いようです。そこで、Z世代社員の理解を深め、世代や立場を超えて会社の未来をともに作るパートナーになるヒントを見つけていきましょう。
Z世代という言葉は、ユーキャンの2021年新語・流行語大賞で話題になりました。2023年時点で概ね「25歳まで」「20代前半まで」と言われています。
つまり、皆様の職場の新入社員はZ世代といえるのです。
Z世代に関する様々な調査結果が公表されています。
例えば、「Z世代は出世を好まない」「Z世代は仕事とプライベートを分けたがる」「Z世代は飲み会に行きたがらない」等です。
しかし、それはあくまでもその時の調査対象者の傾向です。また、全員がそう答えている訳ではありません。あくまでも「統計上」のことです。
地域や環境によって多少異なってきますが、以下のようなZ世代の共通した時代背景はあると思います。
良い悪いではなく、学生時代に上記のように過ごしていることを踏まえて関わる必要があります。
例えば、「メモを取るように」と言われると経営者の皆様はどんな行動を想像しますか?
ボールペンを取り出し、紙の手帳にメモをする・・・と想像するかもしれません。
一方、Z世代はスマホやタブレットが必需品になっています。
そのため、ペーパーレスの意識が私たちよりも強く、紙の手帳にボールペンを使ってメモを取るのではなく、スマホで写真をとるかもしれません。
その時に「何を考えているんだ!普通は紙に書くだろ!」と説教をしてしまうと、自ら新入社員との関係を悪くしてしまいます。
これからの経営者はZ世代の良い点は取り入れつつ、社員に要求する際は、「こんなことは当たり前」「普通は~するはず」と思わず、コミュニケーションを取る力が求められます。
確かに、スマホで写真を撮った方がコンパクトに情報をまとめられ、簡単に共有・整理できるというメリットがあります。
一方で、セキュリティの問題もあるかもしれません。そのため、Z世代の価値観をただ単に否定するのではなく、メリット・デメリットを検討した上で、Z世代の価値観を理解していく姿勢が求められています。
Z世代は、私たちよりもSNSを使いこなしているところがあります。SNSでは自分がほしい情報が得られ、自分と合いそうな仲間とすぐにつながれるというメリットがあります。
一方で、見たくない情報や聞きたくない意見を簡単にシャットダウンできます。そのため、もしかすると立場や年齢、価値観の違う経営者・上司・先輩と向き合うことに慣れていないのかもしれません。
また、コロナ禍だったので、対面でのコミュニケーションや大人数でのコミュニケーションが不慣れなところがあるかもしれません。
更に、叱る文化よりも褒める文化で過ごしてきたので、経営者・上司・先輩が叱ると受け止めきれないこともあるでしょう。
その際に「Z世代はコミュニケーション能力が低い」「メンタルが弱い」「好きなことしかやらない」と断じてしまうのではなく、「自分(経営者・上司・先輩)とは違う背景の中で過ごしてきたんだな」と思えば、Z世代に対して興味関心が湧くのではないでしょうか。
Z世代の新入社員から「Z世代だからコミュニケーションが苦手なんだね!と言われてムカついた」「Z世代ってプライベートと仕事を分けたがるよねと言われたけれども、私はそうではないのに・・・」という声を聞きます。
「Z世代」という大枠で新入社員を判断すれば、誰でも不快に感じるのではないでしょうか。
このような見方を「バイアス」といいます。バイアスとは自分の経験や価値観・考え方に基づいた無意識にもっている偏った見方のことです。バイアスで人を判断すると差別、勘違い、間違いにつながることがあります。大切なことは、自分のバイアスを自覚し、決めつけないことです。
「Z世代だから」という判断の仕方は「紋切型バイアス」と言います。皆様、自分はどんなバイアスを持っていますか?バイアスの種類は多いですが、新入社員対して持ちやすい4つのバイアスを紹介します。
バイアス名 | 詳細 | 例 |
---|---|---|
確証バイアス | 経験による「勘」などから、ストーリーや結論を作り上げ、それにあう証拠ばかりを集め、更にストーリーや結論を強化する傾向 | ・新入社員のAさんが一度、●●という業務でミスをしたことがあると、「Aさんは●●が苦手なはず」と思い、Aさんが●●で上手くいっていないことばかりに目が行く。 |
合意推測バイアス | 自分の行動や考えこそは、一般的で常識だと思い込む傾向 | ・自分が社会人1年目の時にできていた仕事について、一緒に働く新入社員のBさんに「普通、この程度のことはできるはず」と言う。 |
正常性バイアス | 異変や危険に遭遇した際、「正常な範囲」と思い込み、平然とし安心したい傾向 | ・新入社員のCさんの顔色が悪い気がしたが、「この程度ならば大丈夫であろう」と思い込み見てみぬふりをする。 |
紋切型バイアス | 世代、性別、職業、出身地、人種などに関する限られた情報などから、その人を単純化する傾向 | ・新入社員のDさんに対して「Z世代はストレスに弱いんだよね~」と言う。 ・外国籍のFさんに対して「〇〇人は、わがままなんでしょ?」と言う。 |
もし自分のバイアスに気づいたら、バイアス対策が必要です。以下の2つの問いを自分に投げかけてみましょう。
例えば、新入社員が何かの仕事で失敗した際、「Z世代だから●●は苦手なのだろう」と判断するバイアスを持っているとします。
まずは「事実はどうなのか?」と考えます。そうすると、実は丁寧に仕事を教える前に仕事をやらせて失敗したという事実がわかるかもしれません。そして、「他の視点はないのか?」と考えます。
そうすると、「丁寧に教えてもらえていない状況で新人としてよくチャレンジしたな」という思いに変化するかもしれません。その結果、「よくチャレンジしたね」とチャレンジしたことを褒めることができるでしょう。その上で「〇〇の点は~とすると改善できるから、次回に向けて覚えておこう」と具体的な指示ができると思います。
例えば、「仕事とプライベートを分けたい」と思っているZ世代がいたとします。確かに様々な調査では、仕事とプライベートを分けたい世代であるという結果が出ています。その際、「仕事に慣れるまではそんなこと言っていたらだめだ」と説教をするのではなく、なぜ仕事とプライベートを分けたいと思っているのか?質問してみましょう。思わぬ発見があるかもしれません。
ここまで見てきましたように、それぞれの世代の時代背景は違います。しかし、だからと言って「Z世代は」と大枠で判断することは危険です。人財育成という視点に立てば、世代で見るのではなく目の前の「人」の価値観・考え方・行動に興味関心をもち、個別に理解することが大切です。
「私が若い時はもっと厳しかった」と思わず、期待を込めながら指導、叱る、褒めるということが大切です。それが結果として経営者・上司の世代と「Z世代」が共に事業を支えていく仲間となるでしょう。
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株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。