2023年10月09日
ハラスメント
人に対する嫌がらせやいじめなどの迷惑行為を、ハラスメントと呼びます。
そんなハラスメントにはいくつかの種類がありますが、その中でも特に違いが分かりにくいのが、パワハラとモラハラです。
この記事を見ている方の中にも、
「何がパワハラで、何がモラハラなの?」
という疑問を抱えている方がたくさんいるでしょう。
そこで今回は、パワハラとモラハラの違いについて詳しく解説していきます。
目次
では早速、パワハラとモラハラの定義と違いについて見ていきましょう。
パワハラは「パワーハラスメント」の略で、厚生労働省は、パワハラの定義を以下のように制定しています。
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指
導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
(参考:厚生労働省 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!)
具体的には、以下のような行為がパワハラに該当します。
・身体的な攻撃
・精神的な攻撃
・人間関係からの切り離し
・過大な要求
・過少な要求
・個の侵害
モラハラは「道徳」や「倫理」に反する嫌がらせのことを指します。
ただし、明確な定義づけはされていません。
一般的には言動や身振り、文書などさまざまな方法で人格や尊厳を傷つけ、精神的・肉体的苦痛を与えることをモラハラといいます。
立場に関係なく行われるハラスメントであり、部下から上司に行われるケースもあります。
パワハラとモラハラは対立するものではなく、どちらもハラスメントの一種ですので、違いを明確に示すのは難しいです。
場合によっては、1つの行為がパワハラとモラハラの両方に該当するケースもあります。
あえて違いを示すとすれば、
・起こる場所
・相手の地位
・暴力の有無
上記3つです。
パワハラは職場で起こることが多いですが、モラハラは職場だけでなく、家庭内でも起こります。
また、パワハラは上司が部下に行うことが多いですが、モラハラは地位や立場に関係なく起こります。
さらに、パワハラは暴力を含む行為を指すことが多いのですが、モラハラは暴力行為を含まないのが一般的です。
社内でパワハラやモラハラが行われていると、労働者は安心して働けません。
・仕事に対するモチベーションの低下
・生産性の低下
・利益の減少
・労働者の離職
・人員不足
など、さまざまな悪影響が現れる可能性が高いです。
人員不足になると、残された労働者への負担が増え、不満が増えるという悪循環に陥ってしまうケースもあります。
さらに、パワハラやモラハラで裁判になったり報道されたりすると、自社のイメージが悪くなります。
顧客との継続的な取引が難しくなったり、入社希望者が減少したりといった事態も考えられるため、影響は計り知れません。
パワハラやモラハラは、人の心と体をボロボロにします。
実際に、上司や先輩からのパワハラやモラハラが原因で自ら命を絶ってしまったケースなどもありますので、転職や退職を視野に入れつつ、問題の早期解決に向けて動き出すことが大切です。
たとえ被害に遭っていなかったとしても、パワハラやモラハラが横行する企業では、ベストパフォーマンスを発揮できません。
場合によっては、うつ病などの精神的な病を発症することもありますので注意しましょう。
パワハラやモラハラを発生させないために、企業はどのような対策を行えば良いのでしょうか。
具体的な対策やコツを紹介していきます。
パワハラに関しては、厚生労働省がその指針を公開しています。
(厚生労働省:パワーハラスメントの定義について000366276.pdf (mhlw.go.jp))
こちらの指針を全体に周知することで、パワハラやモラハラをしてはいけないという意識が高まります。
中には、上記資料をただ配布するだけの企業もありますが、伝わっていなければ意味がありませんので、定期的に勉強会や研修会を開催し、内容をおさらいしましょう。
パワハラやモラハラについて調査し、社内の状況を把握すると、問題点が見えてきます。
パワハラやモラハラへの意識や、実態を明確にして、今後どうすればいいのか考えてみてください。
そしてパワハラやモラハラを起こさないための予防策や、被害者や加害者への対応などを、事前に話し合うことが大切です。
より良い職場環境のための改善案を出して、パワハラやモラハラのない職場作りを行っていきましょう。
パワハラやモラハラの被害者が1人で我慢し続けると、状況がより悪化してしまう場合があります。
社内に相談しやすい窓口を設置すると、パワハラやモラハラが深刻になる前に解決できる可能性が高まります。
相談したことが加害者に気付かれてしまうと、噂になってしまったり嫌がらせがエスカレートしたりするかもしれません。
そのようなリスクを回避するため、匿名で相談できるようにするなど、安心して相談できる環境を整えることが大切です。
パワハラやモラハラの相談対応には知識や経験が必要ですので、産業医との連携も検討してみてください。
パワハラは不健全なコミュニケーションの一つです。そのため、コミュニケーションについて改善する必要があります。
一方で、管理職の中には「パワハラの疑いをかけられたくない」「パワハラかどうか気にすることが面倒」と思い、部下や後輩とコミュニケーションを避けてしまう人もいます。
しかし、それは逆効果です。実は、厚生労働省の調査によると、パワハラのある職場の特徴の第一位は、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」職場です。
つまり、日々コミュニケーションを取ることがパワハラ防止につながるということです。
そのため、心理学にもとづいたより良いコミュニケーションを学び、コミュニケーションの幅を増やすような研修が必要となります。
では次に、パワハラやモラハラの被害に遭ってしまった場合の対処法を紹介していきます。
自分の心と体を守るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
パワハラやモラハラの被害に遭った場合は、上司や先輩など、信頼できる相手に相談してください。
それでも解決しなかったり、加害者が自分の上司であったりする場合は、企業の相談窓口や人事部にパワハラやモラハラの状況を相談するのがおすすめです。
間違っても我慢したり、一人で抱え込んだりしないようにしてください。
パワハラやモラハラを受けたら、ひとまず証拠を集めましょう。
具体的には、
・パワハラ、モラハラ発言を録音する
・嫌がらせ行為の内容を書き記す
・メッセージの保存や、スクリーンショットを行う
など、パワハラやモラハラを客観的に証明できる物的証拠を押さえることが大切です。
証拠がないと、パワハラやモラハラが立証されず、泣き寝入りする羽目になりますので注意してください。
社内で解決できないようであれば、外部の窓口や専門家を頼りましょう。
・総合労働相談コーナー
・労働相談センター
・法テラス
・社労士
など相談窓口はたくさんあります。
相談窓口については、詳しくは下記コラムにて解説をしています。
https://mental-link.co.jp/wp/column/power-harassment-7recommended-consultation/
公的機関に相談しても解決しないような場合は、弁護士に相談するのも一つの方法です。
弁護士に相談する場合、着手金や成功報酬が必要になりますが、法律のプロが間に入ってくれますので、トラブルをスムーズに解決できる可能性が高くなります。
パワハラとモラハラは、それぞれ中身が違いますが、どちらも悪質な嫌がらせという点では共通しています。
社内でパワハラやモラハラが行われると、企業と労働者双方に悪影響が及びますので、事前に対策を行うことが大切です。
特にパワハラは、法律で企業に対して対策が求められていますので、管理職を中心に予防の意識を高めなければなりません。
万が一、自分がパワハラやモラハラの被害者になってしまった場合には、早めに相談して、解決策を見つけましょう。
メンタルリンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
【管理職向け】パワハラ防止研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_prevention/
【全社員向け】パワハラ対策研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_measure/
【全社員向け】タイプ別コミュニケーション研修
※心理診断をもとにタイプ別にどのようなコミュニケーションを取るとより良い関係を築くことができるようになるのか理解し、実践することができます。
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/egogram/
株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。