2024年12月09日
ハラスメント
近年問題視されているハラスメントは、従来では上司から部下など、立場が上の者から下の者に向けて行われるケースが大半でした。
ただ、最近ではハラスメント・ハラスメントというのも問題視されています。
これは、一般的なハラスメントとは異なり、部下から上司など、立場が下の者から上の者に向けて行われるハラスメントです。
今回は、そんなハラスメント・ハラスメントの定義やよくあるシーンについて、詳しく解説していきます。
後半部分で、ハラスメント・ハラスメントを防止するための方法についても紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。
目次
ハラスメント・ハラスメントとは、上司の適正な指導や通常の振る舞いに対して、気に食わないと何でも「ハラスメントだ」「訴えますよ」と言って上司を委縮させるいじめ・嫌がらせのことです。
(宮本剛志著『「ハラスメント」の解剖図鑑』誠文堂新光社)
近年では、セクハラやパワハラ、モラハラなど様々なハラスメントが問題視されています。
これに伴って、国や企業が一丸となって対策や法改正を進めており、労働者にもハラスメントの概念が広まりつつあります。
ただ、ハラスメントが問題視され始めたのは比較的最近のことであり、まだまだ間違った認識を持ってしまっている方が多いのが実情です。
このような理由から、近年では何でもかんでもハラスメントと訴えるハラスメント・ハラスメント、通称「ハラハラ」が増えているのです。
では次に、ハラスメント・ハラスメントに該当する代表的なシーンについて詳しく見ていきましょう。
業務上必要な指導や注意など、適切な言動や行動に対して「それはハラスメントだ!」と過度に指摘する行為は、ハラスメント・ハラスメントに該当する可能性が高いです。
例えば、
「もう少しこうしよう」
「この部分を修正してほしい」
「もっと仕事に熱意を持て」
といった指導は上司として当然の言動であり、いってしまえば上司に与えられた役割の1つでもあります。
したがって、シンプルに「不快だ」という理由でハラスメントを主張する行為は、ハラスメント・ハラスメントに該当する可能性が高いです。
ハラスメントに該当する言動や行動をされていないにもかかわらず、
「○○部長からセクハラを受けた」
「○○さんからパワハラを受けた」
といったように、名指しで指摘したり、事実無根の噂を流したりするのもハラスメント・ハラスメントに該当する可能性があります。
このような言動は、社内の雰囲気も悪くしてしまいますし、風評被害にも繋がりかねません。
場合によっては、ハラスメント・ハラスメントによって企業全体の業績が落ちてしまうこともありますので注意しましょう。
各企業では、年齢や性別の異なる様々な人たちが働いています。
そのため、ジェネレーションギャップを感じてしまうことも少なくありません。
近年問題視されているのは、年齢の離れた上司に対する教育の強要行為です。
「それは昭和の考えです」
「もう少し時代の流れを考慮してください」
「ちゃんと勉強してください」
といったものです。
もちろん、適切な指摘や意見であれば問題ありませんが、度を越えるとハラスメント・ハラスメントに該当する可能性があります。
非常に線引きが難しい項目ではありますが、ハラスメントをテーマとしたジョークもハラスメント・ハラスメントに該当する場合があります。
例えば、
「今の言動はパワハラですよ」
「部長はハラスメント気質ですからね」
といったように、冗談のつもりで発言した内容がハラスメント・ハラスメントに該当することもあるのです。
社内でハラスメントと思わしき事態が発生しているときに、当事者ではない第三者が過度に介入するとハラスメント・ハラスメントに該当する可能性が高くなります。
ハラスメント対策担当者や経営陣などが入る分には問題ありませんが、何の権限も持たない従業員が「あなたはハラスメントをしました」「ハラスメントの基準を理解しているのですか?」と過度に追及したり、咎めたりするのはNGです。
では次に、社内でハラスメント・ハラスメントが起こるとどういった悪影響が出るのか、ということについて詳しく解説していきます。
業務を円滑に進めるためには、上司がしっかりと部下を管理・育成しなければなりません。
そのためには、ときに叱咤激励が必要になることもあります。
しかし、上記のようなハラスメント・ハラスメントが横行すると、上司が「これもハラスメントに該当するのでは?」とその都度萎縮してしまうため、パフォーマンスを発揮できなくなるのです。
もちろん、部下を持つ上司や役職者がハラスメントに対する意識を持つことは大切ですが、ハラスメント・ハラスメントは過剰な意識を持たせてしまう可能性があります。
仕事の割り振りや指示などの管理業務も、上司に与えられた仕事の1つです。
しかし、ハラスメント・ハラスメントが横行すると、スムーズに仕事を割り振れなくなってしまい、上司の仕事量が増える可能性があります。
そうなれば、上司が肉体的あるいは精神的に疲弊してしまうため、チーム全体が機能しなくなってしまうのです。
社内でハラスメント・ハラスメントが横行すると、全体のコミュニケーションが阻害されます。
いうまでもありませんが、業務を円滑に進めるためには、チームワークが大切です。
コミュニケーションが阻害されると、チームワークが乱れてしまうため、生産性や効率の低下に繋がりやすくなります。
部下が育たなくなるということも、ハラスメント・ハラスメントによって引き起こされる弊害の1つです。
部下は、日々の経験や上司からの指導によって成長していきます。
しかし、ハラスメント・ハラスメントが起こると上司から指導を受ける機会や、指導の質が著しく低下するため、部下が育たなくなってしまうのです。
部下が育たないということは、企業全体の成長が止まるということですので、最悪の結末を迎える可能性が高くなります。
ハラスメント・ハラスメントを防止するためには、企業側が積極的に対策をしていかなければなりません。
以下、効果的な施策を4つ紹介していきますので、ぜひ導入してみてください。
ハラスメント・ハラスメントを防止するためには、企業としてハラスメント対策を徹底することが大切です。
例えば、
などです。
このように、上司の教育を徹底し、部下を守るための取り組みを行うことによって、ハラスメント・ハラスメントを防ぎやすくなります。
ハラスメントの基準を明確にし、それを従業員全員に周知することも、ハラスメント・ハラスメント対策として非常に重要です。
先ほども解説したように、ハラスメントが問題視され始めたのはつい最近のことであり、中には間違った知識を持ってしまっている従業員もいます。
間違った認識や解釈を持っている従業員が多ければ多いほど、ハラスメント・ハラスメントが起こりやすくなります。
事前にハラスメント・ハラスメントの基準を明確にし、それを周知することによって、従業員の理解度が深まるため、ハラスメントに対する適切な判断が行えるようになるのです。
ハラスメントを指摘されたときに、何の根拠もなく謝罪してしまう上司がいますが、これは事態を悪化させる原因になります。
なぜなら、
「ハラスメントを指摘すればすぐに謝罪してくれる」
という風潮が広まり、部下が安易にハラスメント・ハラスメントを主張しやすい環境ができあがってしまうからです。
もちろん、ハラスメントに該当する行為を行い、それを指摘された場合はしっかりと謝罪をすることが大切ですが、客観的証拠もなしに謝罪するのは適切な対応とはいえません。
そのため、何がハラスメントで何がハラスメントではないのか、部下からハラスメントを指摘された場合はどうすればいいのか、という点をしっかりと管理職に周知しておきましょう。
ハラスメント・ハラスメントに関する防止規定を設けることも、企業側にとっては非常に重要です。
規定を作成しておくことによって1つの抑止力となります。
つまり、部下が安易にハラスメント・ハラスメントを行えなくなるということです。
同様に、ハラスメントに関する処罰規定を設けておくことによって、双方の心理的安全性を守れるようになります。
ハラスメント・ハラスメントとは、上司の適正な指導や通常の振る舞いに対して、気に食わないと何でも「ハラスメントだ」「訴えますよ」と言って上司を委縮させるいじめ・嫌がらせのことです。
上司から部下に対して行われることが多いハラスメントとは違い、部下から上司に対して行われることが多くなっています。
ハラスメント・ハラスメントが横行すると、上司が上司としての役割を果たせなくなり、企業全体の生産性や効率、雰囲気が低下する可能性がありますので注意しましょう。
ハラスメント・ハラスメントを防止するには、企業側がしっかりと対策を行う必要があるため、今回紹介したことを参考にしながら自社に合った対策を取り入れましょう。
ハラハラの具体的な事例について更に詳しく知りたい方は、『「ハラスメント」の解剖図鑑』(誠文堂新光社)をご覧ください。
メンタルリンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
【一般社員向け】上手な叱られ方研修
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【全社員向け】ストレス対処研修
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【入社1~3年目向け】メンタル強化研修
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【全社員向け】パワハラ対策研修
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株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。