2024年05月07日
ハラスメント
様々なハラスメントが問題視されている現在においては、企業側も従業員側もハラスメントに対してかなり敏感になってきています。
知らず知らずのうちに加害者や被害者にならないためにも、事前に知識をつけておくことはとても大切です。
近年では、パワハラやセクハラなどに加え、ロジハラも問題視されています。
そこで今回は、あまり聞きなれない「ロジハラ」の特徴や原因、対処法について詳しく解説していきます。
目次
論理や理屈、自分なりの正論を武器にして相手を精神的に攻撃し、追い詰めるいじめ・嫌がらせのことです。
セクハラやパワハラは、意図的に行われることも多いのですが、ロジハラは良かれと思って行ってしまうケースもありますので、事前に知識を身につけておかなければなりません。
また、パワハラの精神的攻撃に該当することもあるので、注意が必要です。
現代の日本では、多様性(ダイバーシティ)が取り入れられはじめています。
これは、
・年齢
・性別
・働き方
・価値観
・ハンディキャップの有無
などに関係なく、様々な人たちがともに働くことを意味しています。
この取り組みは非常に素晴らしいことなのですが、多様性がロジハラの原因になってしまうこともあるのです。
これまでの日本には、言葉ではなく「察する」ことを良しとする文化がありました。
しかし、多様性が取り入れられている昨今においては、察することが難しくなっており、お互い言葉で伝えることが求められています。
このようなこともあり、指摘や注意のつもりで伝えたことが、価値観等が違う相手からするとロジハラとして捉えられてしまうケースが増えているのです。
他にも、ある働き方の人の「常識」から一方的な正論を自分とは違う働き方の人にぶつけてしまい、ロジハラになるケースも増えているようです。
では次に、ロジハラが横行するとどのようなデメリットが生じるのか、ということについて詳しく見ていきましょう。
たとえ主張が正しくても、ロジハラに該当する伝え方をしてしまうと、そこに「被害を受けた」と思う人が生まれてしまいます。
そうなれば、相手を精神的に追い詰めることになるため、仕事の生産性や効率の低下に繋がりやすくなるのです。
場合によっては、裁判になってしまうこともありますので、伝え方を工夫しなければなりません。
ロジハラは、被害者だけでなく、職場全体の士気を下げます。
仮に正論だったとしても、一方的にまくしたてたり、決めるような話し方をしたりすれば相手は不快な気持ちになります。
その状況をチームメンバーが見ていた場合、当然良い気持ちにはなりません。
人間の感情は伝染しますので、1人がネガティブな感情を持つと、チーム全体にそのネガティブな感情が伝わってしまうのです。
その結果、職場の心理的安全性を低下させる可能性があります。
では次に、ロジハラが起こりやすい場面について詳しく解説していきます。
複数の従業員が参加する会議でロジハラが起こる場合もあります。
例えば、意見の対立が起こった際に、上司が部下に対して正論を突きつけ、ぐうの音も出ないほど追い詰めるというようなケースです。
気になる部分を指摘するのは重要ですが、言い方や伝え方を間違えるとロジハラに該当する可能性が高くなります。
部下への指摘や注意も、上司の仕事の1つです。
ただ、正論ばかりを振りかざしてしまうと、言っていることが正しくても部下が委縮したり、反感を持ったりする可能性が高くなります。
「部下が私の言っていることを理解しようとしない!」とイライラしている人は特に要注意です。
ロジハラは、上司が部下に対して行うケースが多いのですが、部下から上司に行われるケースもあります。
例えば、部下が上司に報告を行った際、上司が質問をしたとしましょう。
この時に、
「そんな当たり前のことは聞かなくてもわかりますよね。勉強不足ではないですか?」
これは少し極端な表現のように思うかもしれませんが、よくあることです。
このように、下に見たような言い方をされた場合、上司は少なからず精神的なショックを受けますよね。
その結果、上司が適応障害等になったというケースもあります。
ロジハラは、社内での立場に関係なく起こりますので、従業員全員が気を付けていかなければなりません。
では次に、ロジハラをしやすい人の特徴について詳しく見ていきましょう。
相手よりも優位に立ちたいと考えている方や、プライドが高い方はロジハラをしやすいと言えます。
プライドが高い方は、他人を見下している、あるいは自分が最も優れていると考えているケースもあり、このような感情が言葉に出てしまうのです。
世の中には、一定数「自分が常に正しい」と思っている方がいます。
このような方は、意見の対立やトラブルが起こった際、相手が間違っているという前提で話を進めます。
このようなことから、相手の意見や考えを一切聞かず、自分の意見や主張だけを一方的に伝えるというやり方になってしまう可能性が高いのです。
ロジハラをしやすい方は、共感力に欠けています。
つまり、相手の気持ちを汲み取る力が低いということです。
議論とは、お互いの意見や主張を踏まえ、建設的な話し合いを行うことを指します。
しかし、共感力に欠けている方は、相手の気持ちや考えを理解する力が物凄く低いため、相手が何を言っても自分の意見や考えを通そうとするのです。
では次に、ロジハラ上司にならないために意識すべきポイントをいくつか紹介していきます。
ロジハラ上司にならないためには、相手の気持ちを想像することが大切です。
相手はどのような状況に置かれていて、どのような感情で話をしているのか、相手はなぜそのような主張をしているのかを考えることにより、建設的な話し合いや指導が行えるようになります。
ビジネスにおいては、論理的な主張や意見が重要になってきます。
ただし、正論が必ずしも適切なわけではありません。
正論を言ったことによって、相手を苦しめることになったり、業務効率や生産性の低下に繋がったりする場合、その主張は正しくても適切ではないと言えます。
「自分の主張は正論だから、100%自分が正しい」
この考え方は非常に危険ですので、柔軟な対応を心がけましょう。
ロジハラをする方は、自分の主張や意見を一方的に伝える傾向にあります。
ただ、議論にしても指摘にしても、相手の話を聞かないことには何も始まりません。
ロジハラを防ぎつつ、建設的な話し合いや指導を行うためにも、まずは相手の話を聞くことを意識してみてください。
ロジハラは、従業員が個々で気を付けていれば良いというものではありません。
根本からロジハラを根絶するためには、企業側も対策を行う必要があります。
以下、企業が行うべきロジハラ対策について詳しく見ていきましょう。
様々なハラスメントが登場している昨今においては、多くの情報が出回っていますので、何が何だかわからなくなってしまっている経営者や担当者も多くいます。
ただ、企業側が理解を深めておかなければ、どのように対策をすればいいのかが見えてきません。
ロジハラは、注意や指摘と混同されがちですので、事前に正しい知識を身につけ、ルールを決めておくことが大切です。
企業内部の問題点を把握するためには、定期的に社内調査を行うことが大切です。
本人が安心して事実を記載できるよう、無記名のアンケートを実施し、ロジハラの有無を確認することによって、現状を把握しやすくなります。
ある程度規模の大きな企業であれば、従業員が気軽に相談できる窓口を設置するのがおすすめです。
そうすることによって、ロジハラの被害で悩んでいる従業員に対してケアやサポートが行えるようになりますし、企業の問題点も明確になります。
ロジハラ被害に悩んでいても、相談先がわからずに悩んでいる方は非常に多くいますので、独立した窓口を設置するのはかなり効果的と言えるでしょう。
ロジハラは、誰でも加害者、あるいは被害者になる可能性があります。
仮に自分がロジハラの被害者になってしまった場合、一体どのように対処すればいいのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
ロジハラをしている方は、その自覚がない場合も多いです。
中には、良かれと思って正論を突きつけ、相手を追い詰めてしまっている方もいます。
このような方については、本人に直接伝えるのがおすすめです。
ただし、伝え方やタイミングを間違えると、さらに大きなトラブルに発展する可能性が高くなりますので注意しましょう。
「あなたの言い方がおかしいんだよ!」
と言ってしまっては相手を感情的にさせてしまうだけです。
相手が比較的受け止めやすいように、自分の気持ちを伝えてみましょう。
例えば、
「追い詰められている感じがして、頭が真っ白になってしまいます」
「少しでいいので、私の話も聞いてもらえますでしょうか?」
等です。
本人にはっきり伝えることが難しい場合は、ロジハラ上司の、そのまた上司に相談してみましょう。
そうすることによって、会社として対処してくれる可能性が高くなりますので、被害を食い止めるとともに、会社の雰囲気も改善しやすくなります。
今すぐにロジハラを食い止めたい場合は、相手と自然に距離を取りましょう。
同じ会社で働いている以上、一切かかわりを持たないのは難しいかもしれませんが、最低限のコミュニケーションに留めることは十分可能だと思います。
自分を大切にしてくれない相手と無理に近しい関係になる必要はありません。
上司からのロジハラに悩んでいる方は、物理的な距離、あるいは心の距離を取ることを心がけてください。
自分なりの正論を突きつけて相手を追いつけることを「ロジハラ」と言います。
これは、セクハラやパワハラ同様、立派なハラスメントです。
ただ、セクハラやパワハラとは違って、自覚がない方が多いのもロジハラの特徴です。
知らず知らずのうちにロジハラ上司にならないためにも、今回紹介したことを参考にしながら、部下やメンバーとコミュニケーションを取るようにしましょう。
また、ロジハラの被害に遭っている場合は、できる限り早めに対処することが大切です。
上司からのロジハラに悩まされている方は、今回紹介したことを参考にしながら、状況に合った対処法を試してみてください。
※2024年8月にハラスメントに関する新刊を出版予定です。ロジハラについても事例をもとに照会していますので、ぜひご覧ください。
メンタル・リンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
【管理職向け】心理的安全性研修
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【管理職向け】本物の傾聴力研修
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【全社員向け】タイプ別コミュニケーション研修
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【全社員向け】パワハラ対策研修
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