ノイズハラスメント(音ハラ)とは?概要や職場での具体例を徹底解説!

ハラスメント

ハラスメントと聞くと、パワハラやセクハラをイメージする方も多いのではないでしょうか。

しかし、近年ではその他にも様々なハラスメントが登場しています。

中でも注目を集めているのが、ノイズハラスメント(音ハラ)です。

新聞、テレビ、雑誌でも取り上げられることが多く、私もよく取材を受けます。

通称「音ハラ」と呼ばれるこのハラスメントは、誰もが被害者・加害者になり得る非常に身近なハラスメントですので、事前に正しい知識を身につけておかなければなりません。

そこで今回は、音ハラの概要や職場での具体例、被害者あるいは加害者にならないためのポイントについて詳しく解説していきます。

ノイズハラスメント(音ハラ)とは?

音ハラは、大きな音を出して周囲に不快な音を発生させることで職場環境を悪化させ、周囲に精神的負荷を与えるいじめ・嫌がらせのことを指します。

日常における様々なシーンで起こるハラスメントですが、その中でも特に発生頻度が高いのは「職場」です。

冒頭でも解説したように、音ハラは全ての方が被害者あるいは加害者になる可能性がある身近なハラスメントですので、事前に正しい知識を身につけ、周囲に配慮していかなければなりません。

ノイズハラスメント(音ハラ)がもたらす悪影響

音ハラは、集中力の低下やストレスの増大など様々な弊害をもたらします。

職場で発生した場合、生産性や効率の低下により、業績に影響が出たり、ケアレスミスに繋がったりするため、結果として会社全体に悪影響が出てしまうのです。

また、音ハラについては加害者に「自覚」がないケースも多く、知らず知らずのうちに周囲を不快にさせてしまい、気づいたら周りに誰もいなかったという事態に陥ってしまうこともあります。

職場でよくあるノイズハラスメント(音ハラ)11選

音ハラは日常生活や仕事において比較的発生しやすいトラブルであり、知らず知らずのうちに加害者になってしまうこともあります。

音ハラの加害者にならないためには、どのような音が音ハラに該当するのかを理解しておかなければなりません。

今回は、職場でよくある音ハラ事例をいくつか紹介していきます。

キータッチ音

職場で起こる音ハラとして最も代表的なのが、キータッチ音です。

中でも「Enter」の打鍵音で周囲を不快にさせてしまうケースが多いようです。

その他、長い爪でキーボードを叩いたときになる「カチカチ」という音や、マウスの音なども音ハラに該当する場合がありますので、必要以上に大きな音を出さないようにしましょう。

ガムの咀嚼音

ガムの咀嚼音は、職場に限らず周囲を不快にさせます。

口を開けてガムを噛んだり、あえて大きな音を出したりといった行為は音ハラに該当する可能性が高いため注意してください。

その他、ガムのニオイでストレスを与えてしまうケースもありますので、ガムを噛むときは口を閉じるなど、周囲への配慮を忘れないようにしましょう。

電話での話し声・オンライン会議での話し声

取引先やクライアント、部下や上司との電話は業務に必要な行為です。

ただ、声のボリュームが大きすぎると周囲を不快にさせたり、集中力を低下させたりといった事態に繋がります。

その他、オンライン会議中のPCからの音漏れも周囲に迷惑をかける可能性が高いため注意してください。

口笛や舌打ち

口から出る”言葉以外”の音は、周囲を不快な気持ちにさせます。

・口笛

・舌打ち

・唾液の音 

休憩時間や食事中など、特定の場面でたまたま音が出てしまうのは問題ありませんが、四六時中続くと音ハラに該当する可能性が高まります。

ため息

ため息は、人間の本能的な行動ですのである程度仕方ない部分もあるでしょう。

ただ、極端に大きな音を伴うあくびを繰り返すと周囲の集中力を低下させたり、不快な気持ちにさせたりといった事態に繋がりやすくなります。

特定の人に対して、不機嫌に舌打ち、ため息を繰り返すと、パワーハラスメントの「精神的攻撃」にもなりかねません。

貧乏ゆすり

貧乏ゆすりは周囲に不快に感じられることも多く、オフィスなどでは配慮が必要な場合があります。

それだけならまだ許容できる方もいるかもしれませんが、その微細な振動が机や椅子に伝わって「ガタガタ」「カタカタ」といった不快な音が出るケースも多いです。

ボールペンやシャーペンのノック音

ボールペンやシャーペンのノック棒(ふたの部分)を、意味もなくカチカチする行為は音ハラに該当する可能性があります。

本人は気持ちがいいかもしれませんが、周りにとってはストレスに感じる方もいるため、必要以上にノックをするのは控えましょう。

ハイヒールの音

ハイヒールで勢いよく歩くと、かなり大きな音が鳴ります。

実は、この行為も音ハラに該当する場合があるのです。

ビジネスシーンにおいて、ヒールの高い靴を履く機会はそうないと思いますが、パンプスなどでも床材によっては大きな音が鳴る場合がありますので注意してください。

書類を整理するときの音

机に書類を打ち付けて整理している方はたくさんいると思いますが、実はこの行為も状況によっては音ハラに該当する場合があります。

「トントン」というような小さな音であれば問題ありませんが、力強く打ち付けてしまうと周囲を不快にさせる可能性が高まります。

書類の数や種類によっては「ドンドン」という大きな音が出る場合もありますので、できるだけ静かに整理するようにしましょう。

引き出しを閉めるときの音

近年増えているのが、引き出しを閉めるときの音に関する相談です。

例えば、部下に注意をしているときや何らかのトラブルが生じた際に、衝動的に引き出しを強く閉めるといった行為は音ハラに該当する可能性があるため注意が必要です。

その他、議論をしている最中に机を叩くといった行為も音ハラと判断されることがありますので注意してください。

カップラーメンを食べるときの音

食事をするためのスペースであれば、問題ありませんが、自席で食べ「ズルズル」と音を立て続けることは、音ハラに該当する可能性があります。

音ハラに該当するしない関係なく、周囲の集中力を阻害し、業務効率を低下させることもありますので、休憩室等の別の場所で食べることをお勧めします。

また、カップラーメンは強烈な匂いがすることもあります。その匂いが「スメルハラスメント」にもつながることがありますので、要注意です。

職場で音ハラの被害に遭った場合はどうすればいい?

職場で音ハラの被害に遭った場合は、以下の方法で対処するのがおすすめです。

・提案型相談をする

・その場を離れる

・イヤホンや耳栓をする

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

提案型相談をする

音ハラに悩まされている場合は、上司に相談するのがおすすめです。

ただ、

「○○さんの行為は音ハラです。今すぐやめさせてください」

といった相談の仕方だと角が立ちます。

そのため、

「○○さんの音が気になって集中できないので、イヤホンをしてもいいですか」

「○○さんの出す音が不快で体調に支障が出そうなので、耳栓をしてもいいですか」

など、提案ベースで相談するのがおすすめです。

その場を離れる

不快な音で体調に支障が出そうな場合や、集中力が切れてしまう場合は、静かにその場を離れましょう。

フリーアドレスの場合は、別のデスクに移動するというのも1つの方法です。

また、一定の時間だけ不快な音を出す方がいるのであれば、その時間に休憩を取ってしまうのも良いでしょう。

イヤホンや耳栓をする

イヤホンや耳栓は、周囲のノイズをシャットアウトしてくれる優秀なアイテムです。

ノイズキャンセリング効果のあるイヤホンや、密着性の高い耳栓をすることで、周囲の音が気にならなくなるかもしれません。

ただ、仕事によってはイヤホンや耳栓が使えないこともありますので注意してください。

直接注意する

何らかの理由でその場を離れられない場合や、イヤホンや耳栓が使えない場合は、本人に直接伝えるのも1つの方法です。

ただし、直接注意するのはかなり勇気がいりますし、場合によってはトラブルに発展してしまうこともありますので、言葉選びやタイミングを考えながら慎重に行う必要があります。

相手に直接伝えるしか方法がないときは、角が立たないようにやんわりと伝えたり、当事者と二人きりの状況を作ってから伝えたりといった工夫をしましょう。

いずれにしても、直接注意する場合には、他の人に一度相談し、他の人はどう思うのか確認してみましょう。

音ハラの加害者にならないために意識すべきポイント

音ハラは、数あるハラスメントの中でも特に身近なものであり、知らず知らずのうちに加害者になってしまうケースも珍しくありません。

では、音ハラの加害者にならないためにはどのようなポイントを意識すればいいのでしょうか。

普段から意識する

音ハラの加害者にならないためには、普段から意識することが大切です。

貧乏ゆすりやガムの咀嚼音、それから書類の扱い方やキーボードを叩く音などは、無意識に行っていることが多く自分では気づけないケースも多々あります。

そのため「周囲を不快にさせる音を立てていないか」ということを自分自身で確認してみるのがおすすめです。

不安であれば、同僚などに確認してみるのもいいかもしれませんね。

ルールを決める

「ガムを噛むなんて非常識!」「音を立てないのが当たり前でしょ!」とお互いの価値観のぶつかり合いからトラブルになるケースがあります。

そのため、ルールを決めることが大切です。

例えば、「カップラーメンを食べる際には、休憩室で食べる」「オンライン会議に参加する際には、オンラインブースを使う」などです。

ルールが決まれば、お互い気を付けることができます。また、注意もしやすくなるのでトラブルを防止することができるでしょう。

ストレスを溜め込まない

音ハラと指摘される方の多くは、極度のストレスにさらされていることが多いです。

「ストレスでついものに当たってしまう」

という方は、すぐにできるストレス発散法を試してみると良いでしょう。

【おすすめのストレス発散法①】

1:力いっぱい手を握りしめ、パッと手を開いて脱力する

2:手のひらに意識を集中させる

【おすすめのストレス発散法②】

1:両肩を耳に触れるぐらいにあげて脱力する

2:首の後ろや両肩に意識を集中させる

いずれも筋弛緩法の一種ですが、気分転換にはとても効果的です。

ストレスが溜まり、やるせない気持ちになってしまったときは、ぜひ試してみてください。

まとめ

不快に感じる音を発し、周囲にストレスを与える行為を音ハラと呼びます。

音ハラは、パワハラやセクハラ同様立派な「ハラスメント」ですが、本人に自覚がないことも多いため、加害者にならないためにも正しい知識を身につけておくことが大切です。

また、万が一音ハラの被害に遭ってしまった場合は、強い口調で注意するのではなく、ひとまず上司に相談をしたり、イヤホンをしたりなど角が立たない対処法を実践してみましょう。

関連研修

メンタルリンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
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【経営者向け】無自覚なハラスメント防止研修
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この記事を書いた人

公認心理師/シニア産業カウンセラー

宮本剛志

株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。

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