2023年08月23日
ハラスメント
役員・管理職という上の立場にいると、部下に対して教育したり指導したりする機会が多くなります。そんなとき、冷静に注意するべきとわかっていても、つい感情的になってしまうことはありませんか?
またこちらに悪気はなくても、あなたの言葉で部下が傷ついたり、トラウマを抱えてしまったりする可能性もゼロではありません。
指導や注意がパワハラ認定されないためにも、どんな言葉がパワハラになるのかを理解しておく必要があります。
この記事では、パワハラ認定される言ってはいけない言葉と、部下に対する上手な伝え方について詳しく解説していきます。
パワハラという言葉が一般的になった今、「それってパワハラでは?」と思われて加害者になってしまわないようにしたいものです。
ではさっそく、パワハラ認定される言葉のジャンルについて解説していきます。
相手を脅し、怖がらせる言葉は「脅迫」と判断され、パワハラ認定されます。
脅迫ではなく冗談のつもりで言ったとしても、パワハラ認定される可能性が高くなりますので注意しましょう。
部下に対して注意や指導をする際に、相手を侮辱するような言葉はNGです。人格を否定し、相手を侮辱する言葉はパワハラ認定されます。
また、人種や国籍、性別などを理由とした差別も侮辱にあたり、パワハラ認定される可能性が高いです。
言われた相手が不快に感じたり、ストレスを感じたりするような非常識な暴言や誹謗中傷はパワハラと判断されます。
悪口を言ったり、身体的な特徴についてバカにしたりと言った暴言は、軽い冗談のつもりだったとしても、パワハラ認定される可能性が高いです。
では次に、パワハラ認定されやすい言葉を具体的にいくつか紹介していきます。
実際に殺すつもりはなく冗談のつもりで言っていたとしても、言われた相手が身の危険を感じ、パワハラ認定されやすいです。
さらに「こんな冗談も通じないなんて」と責めるのも、立派なパワハラですので注意しましょう。
ハッパをかけるつもりであっても、言われた部下にとってはプレッシャーになってしまうのが「クビ」をほのめかす言葉です。
実際にクビにはしないと思っていても、相手が「脅迫されている」と感じるような言葉は言うべきではありません。
辞めてほしいと思っているからこそ、つい口から出てしまう言葉です。
正当な退職勧奨ではなく、感情的に「いつ辞めるの?」と言ってしまうのはパワハラと判断されるリスクが高いと言えます。
また、本当に辞めてしまったときに不当解雇と判断される可能性もあるので、気まぐれに口にしてはいけません。
手を出す、出さないにかかわらず「殴っていい?」と言われると、相手は恐怖を感じます。
明らかに上の立場であるのを利用した発言であり、パワハラ認定されやすいので言ってはいけません。
プレッシャーを与えて成果を上げさせるためだったとしても、相手が恐怖や不安を感じるような言い方は不適切です。
指導や教育が目的だったとしても、「追い詰める」という脅迫に近い表現は避けるようにしてください。
やる気を出させるための発言だったとしても、相手に対する脅迫と捉えられます。相手に恐怖や不安を与え、パワハラと判断されるリスクが高いです。
仕事が遅かったり、ミスが多かったりというような部下に対する不満から、「給料泥棒」と言ってしまう人がいます。
そんな「給料泥棒」という言葉には部下を侮辱する気持ちが含まれていませんか?
言われた部下自身もそれを感じ取ってしまうので、パワハラ認定されやすいのです。
部下に対しての教育や指導のつもりだったとしても「給料泥棒」という言葉を使うのは、不適切と言えるでしょう。
存在や人格を否定する言葉を言われると、人はパワハラだと感じてしまいます。
また、本当に「いてもいなくても変わらない」のだとしたら、しっかり教育して会社に貢献できる人材に育てるべき上司が無能だったということになるでしょう。
部下を教育する役目を果たしていない、自分の事を棚に上げているような人が言いがちな言葉です。
普通に出社し勤務している人に対して「来なくていい」と言ってしまうと、相手は仕事がなくなる不安や恐怖を感じます。
また、本当に来ない方がいいのか、来たらまた責められるのか、と悩んでしまうかもしれません。
「来なくていい」と言う発言は、相手に対する苛立ちから出た言葉である場合が多く、問題解決にもならないので、絶対に口にしないようにしましょう。
できるように指導できない自分を棚に上げて、部下をバカにしている人が口にする言葉です。
その後、きちんとできるようにしっかり教えてもらえれば、部下は「厳しかったけれど、自分のために指導してもらえた」と感じます。
しかし言うだけ言ってそのままでは、部下はパワハラ発言に心が傷つくだけなので誰も得をしません。
部下に対してイライラしたり、不満が溜まったりしたときに思わず口にしてしまう「親の顔が見てみたい」という言葉。
本人だけでなく親御さんを侮辱するような言葉は、パワハラ認定される可能性が高いです。
相手に対する不満が大きい場合に言いたくなるかもしれませんが、悪意が込められた言葉では、その不満は解決しません。
実際に他の人がバカにしていると確認したわけでもないのに「みんな」と第三者も含めて侮辱するような言葉は、パワハラだと判断される可能性が高いです。
さらに他の人がいる前で言ってしまうと、深く心を傷つけてしまいます。もし口から出そうになったとしても、グッと抑えるべき言葉です。
部下を育てるという自分の責任を放棄した発言であり、言われた人は侮辱された気持ちになります。
上の立場である自分自身の存在価値を下げる言葉でもあるので、気をつけましょう。
集団の中に悪い人がいると他の人にも影響を与えてしまうことを表す言葉です。
腐ったミカンが1つでもあると、その周囲のミカンも腐らせてしまうことから、このような表現が使われるようになりました。
個人の感情で相手を「腐ったミカン」と表してしまうのは、侮辱になるためパワハラ認定される可能性が高いです。
部下の能力を否定するような言葉です。上司が部下を使いこなせていないと自分の無能さを表しているようなものでもあります。部下にとっては大きなダメージとなり、パワハラ認定されやすい言葉です。
部下を他の人と比較して侮辱する言葉です。比較されることで自己評価が下がり、モチベーションが低下するだけでなく、深い心の傷を負わせる可能性があります。
この言葉は個人の社会的価値や存在を根本から否定するもので、非常に攻撃的で侮辱的な表現です。
言われた側は、社会における自分の存在意義を全否定されたと感じるため、深刻な精神的ダメージを受ける可能性があります。
また、このような言葉は職場の風土を悪化させ、他の従業員にも悪影響を及ぼすことが考えられます。人間関係の根幹を揺るがすため、絶対に言ってはいけない言葉です。
相手の知能や能力を直接否定し、相手を見下す言葉です。
「バカ」という表現は、その人の全体的な知性や能力を一括して低く評価する侮辱的な言葉であり、言われた側は自己価値を否定されたと感じ、自信を喪失する恐れがあります。
「愛情を込めたつもり」「冗談で言ったつもり」では済まされません。
職場においては、部下の成長や改善を阻むだけでなく、全体の士気低下にも繋がるため、使用すべきではありません。
個人の存在そのものを否定するこの発言は、言われた側にとって極めて攻撃的で傷つくものです。
このような言葉をかけられると、相手は自身の存在意義を疑うようになり、深刻な精神的ダメージを受ける可能性があります。
また、職場における孤立感や疎外感を助長し、退職や精神的な問題を引き起こすリスクが高まります。このような表現は避け、建設的なコミュニケーションを心掛けましょう。
「ゴミ」という表現は、相手を完全に否定し、価値のないものとして扱う非常に侮辱的な言葉です。
この言葉をかけられた側は、自分の存在そのものが無価値であると感じ、強い精神的ダメージを受けるでしょう。部下がメンタルヘルス不調になってしまうこともあります。
また、職場全体の雰囲気を悪化させ、他の従業員にも悪影響を及ぼす可能性があります。
上司や同僚が使うべき表現ではなく、相手を尊重した言葉選びが求められます。
この言葉は、極めて攻撃的で、相手に対して重大な精神的ダメージを与える言葉です。
「死ねばいいのに」という発言は、相手の生命そのものを否定するものであり、深刻なトラウマを与える可能性があります。
このような発言は冗談であったとしても絶対に使用してはいけない言葉です。
パワハラ認定されて訴えられたり、会社から処分されたりするのは避けたいですよね。しかし、上司や管理職、経営者には部下を指導したり注意したりする責任があります。
同じミスを繰り返したり、仕事をなかなか覚えなかったりすると、言ってはいけない言葉をぶつけてしまいたくなることも…。
そんなときは一度冷静になって、言葉を変換して伝えましょう。
・「なんでできないの?」→「どうすればいいか一緒に考えてみよう」
・「やるのが当たり前」→「私はこんなふうにしてくれると嬉しい」
・「もういい」→「困っていることがあればなんでも聞いてくれ」
・「全然ダメだな」→「〇〇なところはすごく良い、▲▲はもう一度見直そう」
・「失敗したら次はないぞ」→「大丈夫。私はあなたの味方だ」
・「こんな簡単なこともわからないの?」 → 「どこが難しいか一緒に見てみよう」
・「何回言えばわかるんだ?」 → 「もう一度説明してみるね」
・「他の人はできるのに」 → 「〇〇を改善すればあなたにもきっとできる」
・「どうしてこんなに遅いんだ?」 → 「どうしたらもっと効率的にできるか考えてみよう」
・「それは違う」 → 「こういう方法もあるよ」
厳しい指導と理不尽な叱責は違います。もし感情的な言葉で部下を叱ってしまったときは、自分の非を認めて部下に謝ることも大切です。
・ついカッとなってしまった
・怒鳴ってしまって申し訳ない
・自分も言いすぎた
と謝り、問題の解決策を部下と一緒に考えましょう。
パワハラになりそうな言葉は、特別なものではありません。日常会話の中で、つい言ってしまいそうになるような言葉も、パワハラ認定されてしまう可能性があるのです。
また、あなたの言葉が「部下のための指導」になるか「パワハラ発言」になるかは、普段の人間関係によって変わります。日頃から部下とコミュニケーションを取り、良好な関係を築いておくことが大切です。
メンタルリンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
【管理職向け】パワハラ防止研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_prevention/
【全社員向け】パワハラ対策研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_measure/
株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。