2024年02月03日
コミュニケーション
心理的安全性が高い職場では、社員が萎縮することなく発言できて、失敗を恐れず新しいアイデアを生み出せるため、生産性が上がると言われています。
この記事を見ている管理職、あるいは担当者の中にも、職場の心理的安全性について気になっている方がたくさんいるでしょう。
そこで今回は、職場の心理的安全性を判断するのに役立つチェックリストを紹介します。
心理的安全性が低い場合にはどうすればいいのか、他社はどのような取り組みをしているのかということについても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
心理的安全性とは、自分の意見や感情を、失敗や間違いを恐れることなく自由に表現できる状態のことです。
心理的安全性が高い職場では、問題を解決したり新しいアイデアを生み出したりするためのコミュニケーションが積極的に行われるため、生産性が高くなると言われています。
1999年にエイミー・C・エドモンソン教授によって提唱された心理的安全性は、現在においてもビジネスシーンで注目されています。
そのきっかけとなったのが、Googleの研究結果です。
Googleは「プロジェクト・アリストテレス」という生産性についての研究を行いました。
結果として「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」と発表したのです。
「チームメンバーは誰か」よりも「チームがどれだけ協力しあっているか」の方が大切だというGoogleの結論によって、多くの企業が心理的安全性の高い職場を目指すようになりました。
エドモンソン教授は、心理的安全性を測るための7つの質問を提唱しています。
1.チーム内でミスをすると、非難されることが多い
2.課題や難しい問題が発生したとき、チームメンバーで指摘しあえる
3.チーム内に「自分と異なるから」と言う理由で他者を拒絶する人がいる
4.チームに対してリスクがある行動をしても安全だと感じる
5.チームメンバーに助けてほしいと言えない
6.チームメンバーは、誰も他の人をおとしいれるような行動はしない
7.チームメンバーとの仕事では、自分のスキルや才能が尊重されていると感じる
心理的安全性が高い職場であれば、この質問にポジティブな答えが返ってくるはずです。
より明確な結果を知るには「あてはまらない」から「あてはまる」へと数字が大きくなるように1〜5段階で数値化するとわかりやすいでしょう。
質問の1・3・5は数字が小さい方が良く、2・4・6は数字が大きい方が良い結果と判断します。
心理的安全性が低いチームや職場では、以下3つの不安が現れやすくなります。
仕事中に疑問点や困りごとがあったときは、上司や同僚に質問したり相談したりします。
しかし、心理的安全性が低いと「メンバーに無知だと思われるのでは?」という不安を感じてしまい、質問や相談がしにくくなるのです。
「無能だと思われたらどうしよう…」という不安から疑問点や困りごとを放置するのは、生産性の低下に繋がります。
自分の意見や提案を拒否されてばかりでは「どうせ何を言っても無駄」だと考えるようになってしまいます。
そうすると、やがて「自分はチームに必要ないのではないだろうか」という不安な気持ちになってしまうのです。
心理的安全性が低い職場では、問題点やミスを指摘したり、意見を言ったりといったコミュニケーションは歓迎されません。
その結果、
「自分が発言することで余計な時間がかかってしまうのでは?」
「邪魔だと思われているのでは?」
という不安を感じるようになってしまうのです。
職場の心理的安全性が低い場合、どのような対策が効果的なのでしょうか。
ここからは、心理的安全性を高めるために行う3つの対策を解説します。
職場やチームの心理的安全性を高めるためには、経営者やリーダーがその重要性を理解する必要があります。
心理的安全性を高めて、どのような職場・チームを目指すのかを明確にしましょう。
・意見を受け入れる
・自分の失敗を隠さない
・不安に思っていることを口に出す
・失敗を理不尽に責めずに受け止める
という経営者やリーダーの行動によって、周りの社員は安心感を得て、心理的安全性の高い職場に近づけるのです。
心理的安全性が高いチームは、全員が同じ方向を向いています。
仲良くなるだけではチームの生産性は上がらないため、チーム全体に共通目標や価値観、ルールを浸透させましょう。
意見を言ったりミスを指摘したりするのも、共通目標が明確であれば前向きに捉えてもらえるため、メンバーは発言しやすくなります。
「どう思われるか」という壁が取り払われ、共通目標に向かって積極的にコミュニケーションが取れるチームを構築できるのです。
心理的安全性の高いチームを作るためには、メンバー同士のコミュニケーションが欠かせません。
メンバーが1対1で話す機会を持つ「1on1ミーティング」や、チームメンバーに対して感謝の気持ちとして少額の報酬を送り合う「ピアボーナス」などは、風通しの良いチーム作りに役立ちます。
心理的安全性の向上に向けて、企業ではどのような取り組みをしているのでしょうか?
ここからは、実際に行われている取り組みの事例を紹介します。
株式会社カヤックは、ゲームやWeb制作分野で活躍している企業です。
月給が平均値とサイコロで決まるという、ユニークな制度をもつことで知られています。
この制度には「評価などはしょせん運だから気にするな」というメッセージが込められているそうです。
評価についても、メンバー全員で決定しており、ランダムに2人1組になり、お互いの良い点と悪い点をコメントし合うことによって最終決定を行っています。
そんな株式会社カヤックには、上司のアイデアに対しても「それは面白くない」と言えるカルチャーがあります。
これは、役割はあるけど役職はないという、独自の文化から来ているものです。
このように、株式会社カヤックは独自の人事制度とユニークな文化によって、社内の心理的安全性を確立しています。
(参考:リクルートマネジメントソリューションズ「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」)
株式会社ねぎしフードサービスは、東京と神奈川を中心に展開する飲食チェーン「ねぎし」を運営している会社です。
同社は、立場の垣根を超えて意見を出し合える社風で、コミュニケーションをとても大切にしています。
「働く仲間の幸せ」を経営の最優先事項に掲げており、心理的安全性の高い環境を会社のトップが率先して作っています。
また「人として認められている安心感」を得られるように、社員やアルバイトとのコミュニケーションを重視しているのも特徴です。
さらに
・接客コンテスト
・清潔さコンテスト
・お客様から感謝されたスタッフの表彰
など、顧客ファーストな取り組みを実施し、会社のためではなく顧客のために働いている、という意識を深めているのも心理的安全性に繋がっているのでしょう。
(参考:リクルートマネジメントソリューションズ「組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方」)
損害保険会社の三井住友海上火災保険株式会社が、2019年から働き方改革および心理的安全性向上に向けて取り入れているのが1on1ミーティングです。
1on1ミーティングを実施するにあたって、まずは部課長などマネジメント層に心理的安全性についての講義を行いました。
1on1ミーティングでは、対話に加えてコミュニケーションカードという独自のツールを活用し、ゲーム感覚でお互いの理解を深める工夫も行っています。
(参考:グーグルも実践、生産性向上のカギ『心理的安全性の確保』とは?)
有名な「ZOZOグループ」を技術的に支えているZOZOテクノロジーズ。
同社代表取締役の金山氏は「心理的安全性を感じながら働くことは、革新的な技術を生み出すために必要不可欠」と明言しています。
ZOZOテクノロジーズでは、かつてやり取りの多くがダイレクトメールで行われており、誰がどこでどのような会話をしているのかわからない状況だったそうです。
このような背景もあり、現在では以下のような取り組みを行っています。
・ダイレクトメール禁止
・経営会議の議事録の公開
・Unipos(メンバー同士で成果給を送り合えるサービス)の導入
などを実施しています。
(参考:DM禁止、原則オープン、ZOZOテクノロジーズが「デジタル心理的安全性」のためにやったこと)
心理的安全性を高めることは、働きやすさや生産性の向上に繋がります。
まずはエドモンソン教授の提案するチェックリストを活用して、職場の心理的安全性が高いかどうかを判断してみましょう。
心理的安全性が低いのであれば、多くの企業が取り組んでいる施策を参考にしてみてはいかがでしょうか?
経営陣やリーダーが心理的安全性について深く理解できれば、生産性が高く誰もが働きやすい職場に近づけるはずです。
メンタル・リンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
【管理職向け】心理的安全性研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/psychological_safety/
【管理職向け】本物の傾聴力研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/listening/
【全社員向け】タイプ別コミュニケーション研修