2025年04月30日
メンタルヘルスケア
ビジネスにおいては、辛い状況に陥ったり、逆境に直面したりといったことが多々あります。
このような状況を打開し、モチベーションとパフォーマンスを一定に保つためには「レジリエンス」を高めることが大切です。
レジリエンスは、年齢や性別、業種や業界問わず必要なスキルとなりますので、身につけておいて損はありません。
そこで今回は、レジリエンスの概念や重要性、高める方法やメリットについて詳しく解説していきます。
目次
レジリエンスとは、落ち込んでも困難や逆境を乗り越え、精神を回復させる力のことです。
元々は心理学の分野で使われていた言葉ですが、近年ではビジネスや教育など、様々な分野で注目されています。
レジリエンスが高い方は、ストレスや重圧を跳ね返す力が強いため、常に一定のパフォーマンスを発揮できます。
その結果、仕事において素晴らしい成果を上げられるようになり、昇進や昇給といった自己実現に繋げやすくなるのです。
ビジネスの世界でレジリエンスが注目されている理由は、以下の通りです。
・ストレス社会である現代を生き抜くため
・パフォーマンスを最大化するため
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
どのような仕事でも、必ず何らかのストレスが生じます。
特に現代はグローバル化やAIの登場、働き方改革やハラスメントへの対策、人手不足など、ビジネスを取り巻く環境が変化しているため、どのようなポジションに置かれていたとしても必ずストレスと戦うことになります。
レジリエンスを高めておくことで、あらゆるストレスへの耐性がつくため、厳しい現代社会を生き抜く力が高まるのです。
仕事で成果を上げるためには、モチベーションを維持し、常に一定のパフォーマンスを発揮していく必要があります。
そのためには、メンタルの状態がとても重要です。
例えば、逆境や失敗によって落ち込んでいたり、モチベーションが極端に下がったままであれば、当然パフォーマンスも低下します。
このような状態では、素晴らしい成果を上げることは簡単ではありません。
しかし、レジリエンスを高め、落ち込んでも逆境や失敗を跳ねのける力を身につけておけば、困難な状況でも一定のパフォーマンスを発揮できるようになるため、業務の効率化や生産性の向上に繋げやすくなるのです。
レジリエンスが低下すると、以下のようなトラブルが起こりやすくなります。
・パフォーマンスの低下
・人間関係の悪化
・ネガティブ思考
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
レジリエンスが低下すると、パフォーマンスの低下につながります。
集中力が下がったり、ケアレスミスを頻発したりと、普段はしないような失敗に繋がってしまう可能性も高くなるでしょう。
そうなれば、当然評価や周囲からの印象も下がってしまうため、負のループに陥りやすくなります。
仕事を円滑に進めていくためには、仲間や取引先、顧客との人間関係が物凄く重要です。
ただ、レジリエンスが低下すると、周囲の目が気になって意見が言えなくなったり、他者のミスを過度に気にするようになったりするため、コミュニケーションがぎこちなくなります。
その結果、人間関係が悪化して生産性の低下に繋がりやすくなるのです。
レジリエンスが低下すると、ネガティブ思考を抱きやすくなってしまいます。
「失敗したらどうしよう」
「これをいったら怒られるかな」
など、このような状態になると、新たなことに挑戦できなくなったり、モチベーションが低下したりするため、個人はもちろん、チームあるいは組織としての成長が停滞してしまう恐れがあります。
近年では、従業員のレジリエンスを高めるべく、様々な対策を講じる企業が増えてきました。
この記事を見ている経営者あるいは担当者の中にも、レジリエンス向上に向けた施策に興味を持っている方がいるでしょう。
そこでここからは、企業が従業員のレジリエンスを高めるメリットについて詳しく解説していきます。
従業員のレジリエンスを高めることにより、離職率の低下に繋がります。
なぜなら、ストレスや失敗を理由に体調を崩したり、休職を選択したりする従業員が少なくなるからです。
離職率が低下すると、人手不足などの問題を解消しやすくなるため、企業全体の生産性を高めやすくなります。
従業員全体のレジリエンスを高めることにより、年齢や性別などの多様性を認め、異なる価値観を受け入れられる企業風土を構築できます。
自分とは異なる価値観や世代の同僚とやり取りする際に、最初は行き違い等が生まれ時には落ち込み、イライラすることもあるかもしれません。
レジリエンスが高い方は、そのまま落ち込み続けるのではなく、メンタルの状態を回復させ、価値観の多様性を受け止め、より良い関係を築こうとするでしょう。
その結果、近年注目されているダイバーシティ経営を実現しやすくなるのです。
企業を存続させていくためには、時代の変化に合わせて柔軟に方針や体制を変えていく必要があります。
これに伴って、困難やリスクに直面することもあるでしょう。
従業員のレジリエンスを高めておくことによって、困難に振り回されず、あらゆるリスクや困難に対応しやすくなるため、危機的状況を乗り越えやすくなります。
では次に、個人がレジリエンスを高めるメリットについて詳しく解説していきます。
ストレス社会といわれている現代を生き抜くには、重圧やプレッシャーに打ち勝つための強い精神力が必要です。
レジリエンスを高め、メンタルの回復力を上げることによって、気持ちの切り替えを素早く行えるようになります。
その結果、常に最高のパフォーマンスを発揮できるようになるのです。
業種や業界問わず、ビジネスの世界では「変化への対応力」が求められます。
昨今では、働き方改革やAIの登場など、かつては考えられなかった変化が起こっています。そんな変化の波にうまく適応できず、悩み続ける方・落ち込む方も多いのではないでしょうか。
レジリエンスを高めることにより、時代の変化やテクノロジーの変化、それから環境の変化などに適応できるようになるため、逆境を自己成長のチャンスに変えられるようになるのです。
レジリエンスを高めることによって、仕事だけでなく、人生の幸福度や充実度を高められるようになります。
なぜなら、気持ちの浮き沈みがなくなり、常にフラットなメンタルを維持できるようになるからです。
また、より良い人間関係を構築することにも繋がりますので、人生のクオリティを上げるためにも、レジリエンスを磨く努力をしていきましょう。
では次に、レジリエンスが低い人の特徴と高い人の特徴について詳しく解説していきます。
「自分はレジリエンスが高いのかな?低いのかな?」
という疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
レジリエンスが低い方は、以下のような特徴を持っています。
・柔軟性が低い
・常にネガティブ思考
・困難や失敗に対して強い抵抗を感じている
逆境や困難を乗り越えるためには、柔軟な対応力が求められますが、レジリエンスが低いと柔軟に物事を考えることができず、様々な角度から物事を捉えるといったことが難しくなります。
また、レジリエンスが低いとネガティブ思考であることが多く、困難や失敗に対して強い抵抗を感じてしまう傾向があります。
レジリエンスが高い方は、以下のような特徴を持っています。
・失敗や困難をチャンスだと捉えている
・好奇心が旺盛
・人に頼るのが上手
新しいことや難易度の高いことに挑戦する場合、必然的に失敗したり、困難に直面したりする可能性が高くなります。
しかし、レジリエンスが高い方は、失敗や困難を成長のチャンスだと捉えているため、落ち込み続けるのではなく、何事においても果敢に挑戦していく傾向があります。
また、好奇心や学ぶ意欲が旺盛ということも、レジリエンスが高い方の特徴といえます。
失敗や逆境に直面したときの恐怖や不安よりも、挑戦することに対する「ワクワク」の方が強いため、物怖じせず挑戦できるのです。
さらに、レジリエンスの高い人は、周囲に適切に助けを求める力にも優れていることが多いです。
うまくいかないことやわからないことがあったときに、素直に「助けて」といえる力を持っているため、困難や逆境をスムーズに乗り越えられます。
近年では、組織全体のレジリエンスが求められる時代となっています。
とはいえ、
「どうすれば従業員のレジリエンスを高められるのかわからない」
と悩んでいる方も多くいるでしょう。
そこでここからは、組織のレジリエンスを強化する方法をいくつか紹介していきます。
組織のレジリエンスを高めていくためには、企業文化や独自性を追求することが大切です。
自社にはどのような存在意義があり、どのような価値観で動いているのかを明確にすることで従業員の行動レベルや意識レベルを統一しやすくなります。
その結果、従業員同士の絆が深まりやすくなり、変化が起こった場合でも混乱し続けることなく、一致団結して対応できるようになるのです。
組織のレジリエンスを強化するためには、心理的安全性の高い職場づくりを意識することが大切です。
従業員が安心して働ける環境を構築しておくことで、それぞれのモチベーションを維持しやすくなり、なおかつ向上心も育てやすくなります。
年齢や性別関係なく、全ての従業員が快適に働ける環境づくりは、企業の存続や成長にかかわる重要な要素となりますので、常日頃から意識していきましょう。
「レジリエンスを高めなさい」と指示を出すだけでは、十分な効果は得られません。
企業全体のレジリエンスを高めたい場合は、研修やワークショップなどを用いて、従業員に学びの機会を与えることが大切です。
研修やワークショップを行うことにより、従業員の意識を統一できるだけでなく、アンガーマネジメントやハラスメントに関する指導も同時に行えるようになるため、一石二鳥といえます。
では次に、個人のレジリエンスを高める方法を紹介します。
個人のレジリエンスを高めるために欠かせないのが、自己効力感です。
これは、困難に直面した際に「自分ならできる」「きっとうまくいく」と強く思える認知状態を指します。
自己効力感を高めることで「失敗したらどうしよう」「自分なんて・・・」といった思考と決別できるため、何事にも果敢に挑戦できるようになります。
レジリエンスを高めるためには、行動力を上げていかなければなりません。
そのためには、明確なビジョンや目標が必要です。
自分の得たいものや知りたいこと、理想とする未来を明確にすることで、行動力を高めやすくなり、結果としてレジリエンスの向上にも繋がっていきます。
逆にビジョンが曖昧だと、行動を起こすためのモチベーションが上がらず、レジリエンスが低下する可能性が高くなりますので注意してください。
レジリエンスを高めるためには、自分の思考パターンを変えることが大切です。
中には「自分の思考を変えるのは難しい」と考える方もいると思いますが、正しいやり方を理解すれば少しずつ思考を変化させられます。
効率よく思考を変えていくためには、臨床心理学の博士「アルバート・エリス」が提唱した
「ABCDE理論」を実践するのがおすすめです。
【ABCDE理論の概要】
・A(Activating Event)→出来事や事実
・B(Belief)→信念(考え方、価値観、思い込み)
・C(Consequence)→結果(結果によって生じる感情や行動、身体反応)
・D(Dispute)→反論(捉え方の疑問や反論)
・E(Effect)→効果(新しい信念体系や人生哲学)
人は、実際の出来事(A)を、自分が持っている信念(B)によって解釈し、その結果として感情や行動、身体反応(C)が引き起こされます。
【具体的な例】
A:出来事や事実
↓
職場でミスをした。
B:信念(考え方、価値観、思い込み)
↓
ミスをしたことによって会社からの信頼を失ってしまったに違いない
C:結果(結果によって生じる結果(結果によって生じる感情や行動、身体反応)
↓
自分は何をやってもダメだ
このようなときは、Bという考え方が本当に正しいのかをD(反論)によって考えていくことが大切です。
例えば「ミスをしたことで新たな気づきを得られた」という捉え方をすれば、その後に続くCを「今回のミスを教訓として、さらに高みを目指していこう」というポジティブな感情に変換できるようになります。
この新たな仮説によって生まれた考え方がE(効果)となるのです。
ABCDE理論の実践を習慣づけることによって、少しずつレジリエンスが高まっていきますので、ぜひ実践してみてください。
レジリエンスを高めるためには、周囲との繋がりを大事にすることが大切です。
そうすることで、仮に自分一人では乗り越えられない困難や逆境に直面した場合でも、周囲の力を借りて何とか問題を解決できるようになります。
心強い仲間の存在が、レジリエンスの向上に大きく貢献するケースは決して珍しくありませんので、人間関係の構築にも力を入れていきましょう。
レジリエンスとは、落ち込んでも困難や逆境を乗り越え、精神を回復させる力のことです。
ストレス社会といわれている現代を生き抜くためには、組織あるいは個人のレジリエンスを高めておかなければなりません。
レジリエンスを高めることで、生産性の向上や業務効率の向上、それから人生の充実度や幸福度の向上といった様々なメリットを得られるようになります。
レジリエンスを高めるということに対して難しく考えてしまう方もいるのですが、日々のちょっとした意識や工夫によって少しずつレジリエンスを高められるようになりますので、強い心を手に入れたい方はぜひ今回紹介したポイントを実践してみてください。
メンタルリンクでは、今回の記事に関連した研修を行なっております。
詳しくは、以下をご覧ください。
【入社1~3年目向け】レジリエンス研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/resilience/
【非管理職向け】セルフケア研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/stress/
【テレワーク導入企業向け】テレワーク下のストレス対処研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/telework/
【一般社員向け】上手な叱られ方研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/how_to_get_angry/
パワハラ防止のための感情コントロール研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/power_harrasment_prevention/
【管理職向け】心理的安全性研修
https://mental-link.co.jp/wp/service/training/psychological_safety/
株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。