どこからがセクハラ?該当する言動・行動を徹底解説!

ハラスメント

数あるハラスメントの中でも、昔から問題視されているのが「セクハラ」です。

ホワイトな企業を目指すためには、セクハラの根絶に向けた取り組みを進めていかなければなりません。

とはいえ、セクハラの基準がわからなければ、対策のしようがありませんよね。

そこで今回は、企業の経営者やハラスメント担当者に向けて、セクハラに該当する言動や行動を紹介していきます。

セクハラについて従業員にしっかりと周知を行うためにも、ぜひ参考にしてみてください。

セクハラとは?

セクハラとは、職場における性的な言動や性別による差別によって、労働者の就業環境を悪化させるいじめ・嫌がらせのことです。

具体的な定義については、男女雇用機会均等法11条1項に定められています。

「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により労咳労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることの内容、当該労働者からの相談に応じ、適切な対応をするために必要な体制の整備、その他雇用管理上必要な措置を講じなければならない」

(引用:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

具体的には、

  • 職場において行われること
  • 労働者の意に反していること
  • 性的な言動であること

上記3つに該当するものをセクハラと呼びます。

セクハラは男性から女性へ行なわれるもの、というイメージが一般的にはありますが、近年では、女性から男性への「逆セクハラ」や、男性同士、女性同士といった同性間でのセクハラも増えており問題視されています。

セクハラには種類がある?

セクハラの種類は、大きく分けると以下2つです。

  • 対価型
  • 環境型

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

対価型

対価型のセクハラとは、性的関係を拒絶したことによって労働者が被害を受けるケースを指します。

例えば、

  • 性的な関係を拒絶されたため、降格させる
  • 性的な関係を拒絶されたため、仕事を与えない
  • 性的な言動を指摘されたため、不適切な配置転換を行う

といったことが、対価型のセクハラに該当します。

環境型

セクハラとして最も多いのが、環境型と呼ばれるものです。

環境型のセクハラには、

  • 視覚型セクハラ
  • 発言型セクハラ
  • 身体接触型セクハラ

上記3つの種類があります。

具体的には、性的な写真を職場に掲載したり、性的な質問をしたり、意味もなく身体に触ったりといった言動や行動が該当します。

どこからがセクハラになる?

先ほども解説したように、以下の3要素を満たした場合はセクハラとみなされる可能性が高いです。

  • 職場において行われること
  • 労働者の意に反していること
  • 性的な言動であること

ここで注意すべきなのが「労働者の意に反していること」という条件です。

性的な発言や言動への感じ方には個人差があるため、明らかなセクハラ発言や行動を除き、一概に「これをしたらセクハラ」とは断言できません。相手がどのように感じたのかという点も重視されます。

ただし、職場におけるセクハラは、多くの人がセクハラと感じるかどうかがポイントとなります。なぜなら、職場において全て相手の感じ方で判断されてしまうと、コミュニケーションが取れなくなる可能性もあるからです。

セクハラに該当する言動・行動6選

では次に、セクハラに当たる可能性が高い言動や行動を具体的に紹介していきます。

1.意味もなく身体に触れる

意味もなく身体に触れる行為は、セクハラに該当する可能性が高いです。

例えば、

  • 褒めるつもりで頭を撫でた
  • 雑談をしているときに肩に手を回した

などです。

近年では、女性が男性の身体に触れる「逆セクハラ」も問題視されていますので、性別に関係なく全ての従業員が注意しなければなりません。

2.性的な確認をする

性的な確認をすることも、セクハラに該当します。

例えば、

  • 異性経験の有無
  • 彼氏や彼女の有無
  • 結婚願望の有無

などです。

何気なく聞いたことがセクハラになってしまうこともありますので、職場では性的な内容をはじめとするデリケートな会話は避けることをおすすめします。

また、そのような会話をしなくても十分信頼関係を作ることができるはずです。

3.異性関係の情報を流す

異性関係の情報を不必要に流した場合も、セクハラとみなされる可能性が高いです。

例えば、

  • 誰と誰が付き合っている
  • 誰と誰が不倫をしている

といった情報です。

仮にこの情報が正しくても、当事者以外に拡散することがセクハラに該当しますので注意しましょう。

また、セクハラだけでなく、名誉棄損にも該当する可能性があるため、軽い気持ちで情報を流すことは避けてください。

4.容姿に関する発言をする

容姿に関する発言も、セクハラとみなされる可能性が高いです。

例えば、

  • 老けている
  • おばさん(おじさん)
  • 胸が大きい

といったようなものです。

上記はあくまでも例であり、他にも容姿に関するセクハラ発言はたくさんあります。

5.しつこくデートや食事に誘う

デートや食事に誘うこと自体は、セクハラに該当しません。

ただし、相手がその誘いを断りにくい状況にある場合や断られているにも関わらず何度も誘う場合は、セクハラに該当する可能性が高いです。

例えば、多くの仲間がいる場でデートや食事に誘ったり、昇進や昇給をちらつかせてデートや食事に誘ったりするケースです。

その他、不倫や性行為の強要などもセクハラに該当しますので、注意してください。

6.過度な露出をする

過度な露出は、セクハラに該当する可能性が高いです。

会社で決められた制服を正しく着ている場合、セクハラに該当することはありません。

ただし、下着をアピールするような着方をしたり、性的なアピールに繋がる着方をしたりするとセクハラになる場合があります。

また、服装が明確に定められていない場合にも注意が必要です。

胸をアピールするような服装や、股間をアピールするような服装は、セクハラと捉えられても不思議ではありません。

悪気が無くてもセクハラになってしまう可能性がありますので、TPOを意識した服装を心がけましょう。

ただし、最近は服装について自由であるべきという風潮もあります。もし気になる服装をしている従業員がいる場合には、関係者間で相談し、注意しましょう。注意する際にも、1対1にならず、複数で対応しましょう。

職場でセクハラが横行するとどうなる?

では次に、職場でセクハラが横行した場合に起こる弊害について詳しく解説していきます。

従業員のモチベーションが下がる

職場でセクハラが横行すると、従業員のモチベーションが下がります。

特に当事者(被害者)は、またセクハラをされるのではという不安から仕事のパフォーマンスが低下する可能性が高いです。

また、セクハラを目の当たりにしている他の従業員の士気も下がってしまいますので、できるだけ早く対策をしていかなければなりません。

離職率が上がる

人材不足が問題視されている昨今においては、離職率を下げる取り組みに力を入れる企業が増えています。

ただ、離職率を下げるための取り組みをしていても、セクハラが横行していれば成果は出ません。

なぜなら、セクハラが横行している会社で働き続けたいと考えている方はほとんどいないからです。

セクハラ問題を放置すると、離職率や定着率の低下に繋がりやすくなりますので注意してください。

男女雇用機会均等法の制裁を受ける可能性がある

セクハラへの取り組みを強化せず、社内でセクハラが横行している場合、男女雇用機会均等法の制裁を受ける可能性が高まります。

この法律では、雇用管理上講ずべき措置を定めており、必要な措置を行っていないと判断された場合は、厚生労働大臣もしくは都道府県労働局長から報告を求められたり、助言や指導、勧告を受けたりすることがあるのです。

それでも改善が見られない場合、企業名が公開されるケースもありますので、しっかりと対策をしていかなければなりません。

損害賠償を請求される可能性がある

悪質なセクハラが行われた場合は、損害賠償請求をされる可能性が高まります。

こう聞いて、

「当事者同士の問題である」

と考える方がいるかもしれませんが、使用責任が問われ、企業に対して損害賠償請求が行われることもありますので注意してください。

企業イメージが低下する

セクハラ問題を放置していると、企業イメージが低下しやすくなります。

SNSの使用率が高まっている昨今においては、あっという間に情報が広まります。

セクハラが原因で企業イメージが低下すると、取引先や顧客を失う可能性が高まりますので、しっかりと対策を行いましょう。

企業が取り組むべきセクハラ対策3選

男女雇用機会均等法では、セクハラを防ぐために「雇用管理上講ずべき措置」を定めています。

以下、具体的にどんな措置を行えばいいのかということについて、詳しく解説していきます。

1.事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

方針の明確化およびその周知・啓発とは、セクハラと判断する内容やあってはならないという旨の方針を明確化し、それを従業員に周知することです。

また、セクハラを行った者に対する処罰を決め、それを周知することも事業主の義務となっています。

具体的な措置としては、方針を記載した書類を全従業員に配布するといったことが挙げられます。

2.相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主は、セクハラに関する相談に応じ、適切に対応するための環境を整えなければなりません。

相談窓口を設置したり、対応マニュアルを用意したりといったことが、これに該当します。

ちなみに、相談窓口は人事部や総務部が中心となって運営するケースが多いです。

3.セクハラ発生後の迅速かつ適切な対応

職場においてセクハラが発生した場合、事業主は迅速かつ適切に対応をしなければなりません。

具体的には、

  • 事実確認
  • 被害者への配慮
  • 加害者への罰則
  • 再発防止措置

などです。

これらを行わないと「自社で発生したセクハラ問題に対処していない」と判断され、ペナルティを受ける可能性が高くなります。

上記の「企業が取り組むべきセクハラ対策3選」はとても大切です。しかし、最も重要なことは、職場の風土改革です。風土改革がなければ、どんな対策も効果を発揮しないでしょう。風土は、経営者・管理職や従業員の言葉に表れることがあります。

例えば、あなたの職場には、以下のような会話はありませんか?

Aさん「あの人、セクハラはするけれど、仕事はできるよね」

Bさん「そうだね」

経営者・管理職や従業員の間でこのような会話がよくあるようでしたら、要注意です。

これまで見てきましたように、セクハラの従業員や職場全体に与える悪影響は計り知れません。従業員のメンタルヘルス不調を起こし、モチベーションを下げ、企業イメージを低下させることをする人を「仕事ができる」と認識すること自体が誤りです。無自覚のうちにセクハラ加害者を容認している風土があると言えるでしょう。

「セクハラ加害者=仕事ができない人」

と定義し直すような風土改革が必要です。

まとめ

セクハラとは、職場における性的な言動によって、労働者の就業環境を悪化させる行為のことです。

近年では様々なハラスメントが問題視されていますが、中でもセクハラはかなり昔から取り上げられている問題であり、現在でも根絶できていません。

セクハラは、男性から女性に対して行われるものというイメージが強いですが、その逆も然りです。

職場でセクハラが横行すると、生産性や効率が低下するだけでなく、離職率やイメージの低下にも繋がりますので、早急に対処しなければなりません。

クリーンな職場を構築するためにも、今回紹介した内容を参考にしながら、従業員全員を守るための取り組みや対策を実施していきましょう。

セクハラの具体的な事例について更に詳しく知りたい方は、『「ハラスメント」の解剖図鑑』(誠文堂新光社)をご覧ください。

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この記事を書いた人

公認心理師/シニア産業カウンセラー

宮本剛志

株式会社メンタル・リンク 代表取締役 教育関係の企業(ベネッセグループ)で事業所や相談室の責任者を経験。その後、カウンセラー・研修講師として独立。研修・講演は年間約155回、カウンセリングは年間のべ275人。 複数の組織でハラスメント防止委員会の委員を務めるなど社外でも活動している。「怒る上司のトリセツ(時事通信社)」「週刊ダイヤモンド(2020年5月16日号)」など書籍・メディア掲載も多数。

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